未来絵図 ー二人で歩むこれからー 


 女を抱き締めるのは初めてじゃないけど、手が震えてるのがわかる。

 近付いて抱き締めた。

「松本さんより年季の入った片思いです。すぐには、諦められません。まだ時間がかかると思います。」

 抱き締める手にさらに、力を入れる。

「幸せな奈々子さんをたくさん見せてください。俺に遠慮したりしないで。」

「うん、ありがとう。」

「幸せじゃなかったら、俺にもチャンスがあると勝手に思います。だから、幸せな顔を見せてください。」

 そう言い終わると、自分が涙を流してることに気がついた。奈々子さんがふいに、背中をポンポンと撫でてくれた。泣いてるに気がついてるんだ。

 バッって奈々子さんを離した。

「すみません、ありがとうございました。ベランダいいですか?」

"どうぞ。"と俺の顔を見ずに言ってくれる。

 俺は急いでベランダに出た。落ち着かせようと、タバコに手を伸ばしたが中々火をつけることが出来ず、一人で苦笑い。

 やっと、火をつけタバコをふかしていると、アパートの下に人が見えた。手を振る宮崎と、"お疲れ。"と言う、松本さんだ。

 俺は、軽く手を挙げ、見えないだろうが顔をそらし、泣き顔を見せまいとした。


 やっと、告げることが出来た。

 これで、けじめをつけるんだ。

 部屋に戻ったときは、笑顔でふたりをからかうんだ。そして、側で幸せになっていくのを見守りたい。

 
 俺は、もう1本タバコをふかし、部屋に戻った。
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