未来絵図 ー二人で歩むこれからー 

 そして、今に至る。テレビそっちのけで料理中の奈々子さんの後ろ姿を眺める。ふいに、LINEの受信音が。

ーあと、10分でつきます!けじめつけれた?ー

 宮崎からだ。宮崎が松本さんを引っ張っていったとき、チャンスを作ってくれたのは分かっていた。

 もう、言うしかない。

「奈々子さん。」

「まだ、出来ないんだよね。ごめん。」

 キッチンに入ってきた俺に申し訳なさそうにいう。

「今、幸せですか?…松本さんと付き合えて。」

「うん、幸せ。……なに、急に。」

 俺は奈々子さんとの距離を近づける。自宅のせいか、胸元が広い部屋着に着替えて、無防備に見える。松本さんと身長があまり変わらない俺と長身じゃない奈々子さん。

 ふと、胸の谷間が見えて、そこにも赤いしるしを見つけた。そんな、恋人の一時が垣間見え、妬いてしまう。

「好きです。」

「…えっ。」

「気が付いたのは最近なんです。でも、入社する前から好きだったと思います。」

「隼くん。」

「松本さんがいるのも、俺を、なんとも思ってないのも分かってます。」

「……。」

「自分が先に進めないんです。」

 しばらく沈黙が続く。すごい長い沈黙に感じられる。

「隼くん。」

 ふいに、まっすぐ見つめられ、ドキッとしてしまう。

「ありがとう。松本さんを好きな気持ちは、これからも変わらない。隼くんには、たくさん助けてもらったし、支えてもらった。ひどいことを言ってしまうかもしれないけど。私を支えてくれたように、ゲストハウスでは、松本さんを支えてほしいと思う。私、隼くんは、最高のジョブパートナーと思ってる。これから先も、こんなに仕事する上でわかり会える人はいない。でも、恋人としては無理なの。ごめんね。」

 フラれるのは分かってた。はっきりと言ってくれて良かった。つらい、でも、最高のジョブパートナーと言ってくれて嬉しかった。

「奈々子さん。松本さんからハグの許しはもらってるです。最後に抱き締めていい?」

 奈々子さんは微笑んで"いいよ。"と、頷いてくれた。
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