未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「松っつんと奈々子ちゃんはちゃんと話し合って、互いに思いあってるんだから、問題なんてないわ。ひどいこと言うのね?松っつんがいる前で同じように言ってみなさいよ?」

 強い口調の瑞希にまりかは一瞬たじろぐが、"他人は黙っててよ!"とにらみつける。

「あなたと別れなければ篤史さんの夢は叶ってたのに!一番辛いときに一緒にいてくれたのは篤史さんじゃない!何、智くんと付き合ってるのよ!あなただけ幸せなんて、許されない!」

 まりかは涙目になりながら訴える。

「まりかちゃんは、篤史と知り合いなの?」

 思わずそんなことを言ってしまう奈々子に、一瞬まりかは"しまった"と言う顔をした。

「と、とにかく!私は許さないから!」

 "キッ"と睨み付けすぐさま人混みに消えていく。

「何なの、あれ?奈々子ちゃん気にしちゃダメだよ?」

「あっ、うん。本当なんだったんだろうね。」

 そう言いながら、二人でまりかの消えた方をみた。まりかの篤史に対しての発言も気になりつつ、奈々子は瑞希と買い物に出掛けたのだ。


 9月も下旬に入り、まりかの発言を忘れた頃、最大の台風がやって来たのだ。

 その日、来ないだの旅行で撮った写真をやっと取りに言った新司が、写真をみんなで見ようと言い出し、夕食に行くことになったのだ。しかし、いつも利用するーほのぼのーが定休日だったため、急きょ、奈々子宅で夕食をとることになった。

 1LDKの部屋だがリビングダイニングが広いため、みんなが集まってもそんなに狭くは感じず、適度な距離感で旅行の想いで話をすることが出来た。料理を作り終えた奈々子が机につき、乾杯をした頃、玄関のチャイムがなった。

 奈々子が中々出られずにいると、玄関があく音がした。玄関からリビングはドアがないため見渡せる状態にあった。玄関にいる人物は、スーツケースを廊下に置くと靴を脱いでこっちに歩いてくる。

 みんな一瞬、茫然とする。奈々子は、手に持っていたグラスを落としかけ慌てて持ち直す。

「あっ篤史?あんた何勝手にあがってきてるの!!!」

「わりーな。明日の朝には成田なんだ。だからどうしても今日、奈々子に話があって。その前に、おじさんとおばさんに挨拶したいんだが、いいか?」

 奈々子は気まずい気持ちを露にするが、何も考えていないであろう篤史を渋々と寝室の両親のところへ案内する。

 智也は気にしない素振りをするが、みんなの中には気まずい雰囲気になる。
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