未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
 奈々子と篤史の会話はリビングには丸聞こえ。リビングのみんなもしんみりと話を聞いてる。

「俺、初給料であの婚約指輪買ってたんだ。」

「えっ…。」

「俺、本当に奈々子と家族になりたかった。早く奈々子と家族になりたくて、死に物狂いで頑張った。こどもが出来ないかもしるない、なら、犬をたくさん飼えばいいなんて一人で思いながら、奈々子が仕事頑張ってるの知ってて、俺と仕事どっちが大事なんだって言ったりしてさ。」

「ほんと、その言葉はあんまりだわ。」

「奈々子との時間は誰にも負けない筈だったんだけどな…。あっさり、松本さんに行くんだもんな。」

「えっ!?な、なんで!」

 奈々子が勢いよく、智也の方を向く。

「あの、すっげーこっちをみてる人だろ?」

「そうだけど…。」

「松本さん、ちょっとこっちに来てもらって良いですか?」

 智也は、手に持っていたグラスを静かにおいた。みんなはただ見守る。寝室に入り、奈々子の隣に座ると、篤史は智也の正面に座り直した。

「俺じゃ幸せに出来ませんでした。松本さん、奈々子をよろしくお願いします!」

「君に言われるまでもないよ。幸せにするから。」

「それ聞いて良かった!」

「ちょっと…何で松本さんのこと知ってるの?」

 不思議そう聞く奈々子に対して、"はぁ?"と言う顔をする。

「ワイン工房は俺も何回も行ってるだろ!?それに、奈々子相当付き合ってた頃、俺に失礼なこと言ってるからな?」

 ワイン工房と聞いて、納得したが次の言葉には納得しない。何があったんだろうと思ってしまう。

「俺は、たびたび話に出てくる松本さんって男とは思ってなかったんだよ。それを"篤史より松本さんとの未来の方が想像出来る"とか言われたらさすがに、俺も気がつくよ!」

「えっ私いつそんなことを…。」

「教えてやらん!あっ松本さん、良かったらこれを。」

 篤史が智也に分厚いアルバムを渡した。
< 128 / 143 >

この作品をシェア

pagetop