未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
 智也は、アルバムをめくり手をとめる。中には、友達と奈々子との写真が入っている。篤史と二人の写真は無いものの、智也の知らない若い頃の奈々子がいる。

「…かわいい。」

 中身をみた奈々子は、何これ!と半分怒っているが逆に智也はニヤついてる。

「あっ気になってたんだけど、まりかちゃんと知り合い?」

「…あぁ。奈々子と付き合ってる頃から、迫ってきてた子。あいつは、海外赴任がなくなったのは、奈々子と別れたからで、仕事をやめたのも奈々子のせいだと思ってり、あいつ、奈々子にひどいこと言ったんじゃないか?」

「…大丈夫。…篤史、成田って言ってたけど?」

「あぁ。ロスの研究室に行くことにしたんだ。教授が誘ってくれて…。だから、挨拶に来たんだ…。永住しようかと考えてる。」

 二人の間には沈黙がながれた。篤史がすっと手を差し出し握手を求める。奈々子は、篤史の差し出された手を見つめ、手を握りしめる。

「奈々子。長い付き合いだったな。俺が幸せにしたかった。それは本当だ。…幸せにしてもらえよ。」

 篤史は、智也をみる。

「ありがとう。両親が亡くなった私を支えてくれたのは、間違いなく篤史だよ…。ありがとうね。…元気でね。」

 ふたりは固く握手を交わした。その姿をみんなは見守っている。帰り際、篤史は智也にボソッと何か言ったが奈々子には聞こえなかった。その後、何で智也が、不機嫌になったから、後々分かるが…。


 しばらくして、お開きとなったため奈々子の部屋には、口数が少ない智也と敢えてそれに触れない奈々子の姿が。 篤史から貰ったアルバムを開く智也の側に、コーヒーを置く。智也がふと奈々子をみる。

「…妬いてる…。」 

「へっ?…不機嫌なのは、やきもちだったの!?」

 ラグマットに胡座をかくように座ってる智也から、脚の間に座るように促され、奈々子は指示に従う。奈々子からは、智也の顔は分からないが、前を向くように言われる。

「元カレがもっと嫌な奴なら良かったのに。」

「…うん。」

「奈々子を大事にしてたの分かるよ。帰り際に、奈々子の初めては貰ったので、最後はあなたが貰って下さいねって言われて、最後の最後で、妬いてしまった。」

 後ろから抱き締められる。さらに、抱き締める腕に力が入る。

「……智也くん。私もまだ経験したことがないんだけど、初めての経験なんだけど。……同棲、する?」

 肩越しに智也の方を見ながら言うと、"まじで、いいの?"と返事が帰ってきて、そこからトントン拍子に話は進み、すぐに同棲がスタートした。
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