未来絵図 ー二人で歩むこれからー 


 智也がホテルで勤務しているため、隼がゲストハウスの内装の指示を出しに、九州に向かって数日が過ぎ、奈々子が変わりに雑貨屋に立つことが増えた。

 隼がいないことに気がつくと落胆し帰って行く女性もいたが、新司へアプローチする人たちも増え始めた。中には、あからさまに体を触れ、胸を押し付ける人もいた。そんな時は奈々子がすかさず間に入ることにしていた。

 その日は、お客さまも、少なかったため、しおりと奈々子は二人でランチに出掛けていた。帰ってくると新司の姿がなく、休憩室が閉まっていた。不審に思いに近づくと中から新司と女性の声が聞こえる。ドアノブには鍵が掛かっていたため、すぐに、智也に連絡して、来てもらうよう声かけた。

『…震えちゃって、かわいい。』
『もう、やめて。俺、彼女、いるっすよ…』
『うふふ。彼女がいたらこんなに震えるかしら。あの時と一緒で震えちゃって…。』
『やめてって…』
『ねぇ。まだ、童貞なんでしょ。』
『……。』
『女の人の裸も初めて…?見て、いいわよ、新司くん。』
『!ちょっと!何してるんっすか?』
『触ってもいいわよ?』
『本当、やめっ…!』

ーガチャガチャ  バン ー

 智也が鍵をあけ中に入ると、床に寝た新司に馬乗りになり、ズボンのベルトに手をかける妖艶な女性がいた。

 女性は、下着姿で新司の手を自分の胸に導くように不自然な形をしたまま、智也と奈々子を振り返り、さっと新司から飛び降りると、智也にすがるように抱きついてきた。

「恐かったんです…新司の言う通りにしないと…脅されて仕方なく…あんなことしたんです…。」

 下着姿で智也にそんなことを言う彼女に、奈々子は憤りを感じるが、握る閉める手にグッと力をいれた。

「とにかく、服を着てください。」

 床に落ちていた服を女性に渡すと、奈々子を一瞬にらんだ。

「同じ同性にこんな姿見られたくないの。分からない?早くあなたも出て行って!この人と二人がいいの!」

 女性は、あたかも自分が被害者のように訴えた。

「…中での話は休憩室の外まで聞こえてましたよ。あなたが無理矢理したことですよね。早く服を着てください。そして、早く彼から離れて!」

 女性は、奈々子を睨みつけながら、いそいそと服を着た。
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