未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
 夜からホテルA'Zで謝恩会があるため、二人はそのまま迎えるようにキチンとした格好で、家を出た。

 智也は、スーツにクリスマスプレゼントに奈々子から貰ったチャコールのネクタイとネクタイピンをし、ダッフルコート。

 奈々子は、ワインレッドのワンピースに、袖や襟に茶色のファーがついた黒いコートに、左手の薬指には指輪をして。

 付き合い始めた頃は、手を繋ぐのも腕を組むのも恥ずかしくて赤くなっていた奈々子だが、今は、自然に手を繋ぎ、腕を絡めて甘えることが出来る。

「今日は甘え度が高いね。」

 自分から腕を絡める奈々子に、ちょっと顔を赤く染めながら智也は尋ねる。

「……プロポーズされて、嬉しいからかな?」

 その返事に、智也は襲いたい気持ちを押さえるのがぐっと堪えた。

「もう、あんまり嬉しいこと言わないで……。」

 智也は、こんなとき本当に奈々子のことを好きなんだと、思い知らされる。

 片想い期間が長く、付き合った時間はそれより遥かに短いが知るたびに好きになり、それが積み重なり、気持ちの上では、愛になってる。

 恥ずかしくて、愛してるとはまだ面と向かって言えないけど、自分の腕に絡まっている手にある、自分の証が光輝き、これからずっと未来を同じように歩ける嬉しさで、さらに顔がにやける。

 その顔を除き見られ奈々子と目が合い、二人でお互いを見て、クスッと笑った。

 楽しい時間はあっという間で、ランチを軽く食べたあとは、ショッピングセンターをぶらぶらし、お互いに似合う手袋を選んだり、カフェで今はやりのパンケーキを食べ、過ごした。

 時間より先にホテルA'Zにつくと、やよいと新司がホテルのカフェで寛ぐ姿が見え、謝恩会の受付担当になってしまった独り身の瑞希は、受付席に不機嫌な顔をして座っていて、奈々子と智也は見ないふりをして、そっとショップの裏口から中に入る。

 一月から店舗縮小になるため、整頓された店舗を二人で眺めた。

「智也くんは、いつもヒーローみたいに、助けたり支えたりしてくれたよね。ありがとう。」

 その呟きに智也は、辺りを確認すると奈々子を抱き寄せ"当たり前だよ。"とキスをしたのだった。



 
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