未来絵図　ｰ二人で歩むこれからｰ　
奈々子の淡い恋心
　翌日、奈々子はどんよりとした気持ちで、ホテルＡ'Zに出勤した。社員通用口付近に近づくにつれ、ひそひそと奈々子をみて話している。

　ちらりと目をやると、すぐに話すことを止めるのだが、また、ひそひそ話が聞こえてくる。

　ロッカーにつく頃には、すでに、ぐったりしていた。
　
「おはようございます。」

　いつも通り明るく元気に挨拶すると、次々に、挨拶が返ってくる。

「おはよう。奈々子ちゃん。昨日は大変だったみたいね。」

　そう言いながら、困った顔で近づいてきたのは、同期だが6歳年上の、黒崎やよい。

　真っ黒な髪をボブカットにし、首と耳にはお揃いの誕生石のアクセサリー、黒とグレーのストライプの制服をまとい、すでに、ロッカーをでる準備が出来ているようだ。

「おはよう。やよいさん。本当、最悪。」

　奈々子はため息をついた。

「おはよう、奈々子ちゃん。私もさっき、噂だけ聞いちゃった。」

　申し訳無さそうに言うのは、これまた同期だが１歳年上の永友瑞希。

　明るめのブラウン色の髪をしっかり巻き髪にし、肩より少し長いところでなびかせている。

　黒のいわゆる定番のメイド服に白いフリルのエプロンという、客室係の服装に、ベレー帽を持って立っていた。

「あっ、瑞希さんもおはよう。」

　またまた、奈々子は、ため息をついた。
< 4 / 143 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop