未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「本当、最悪だよ。しかも、職場であんなことされたら。私、困っちゃうじゃん!」 

 そう話すと、周りはちらちらと様子を窺いだす。 

「あの人でしょ?俺と仕事どっちが大事男。」

 瑞希の言葉に、奈々子はうなづいた。

「入社してから色々聞いてたけど、その言葉ほど、がっかりすることなかったわ。」

 やよいが、瑞希に同意を求めると、うんうんと瑞希もうなづく。

「男見る目がなかったんですよ。高校生の私は。」 

 奈々子は、白とブルーのストライプのワイシャツ・黒パンツに着替えて、腰にベージュのエプロンを身に付けながら言った。

「奈々子ちゃんにしては、苦手な肉食系のイケメンだもんね。」 

「奈々子ちゃんには、爽やか系の松っつんがお似合いだよ!」

と、瑞希とやよいが口々に言う。

「やよいさんの言うとおり、奈々子ちゃんの横は、元カレより、松っつんの方がしっくりくるよ!」

 瑞希は、大きな目をさらに大きくし、"いい話ないの?"なんてきいてくる。やよいと瑞希に見られ、奈々子は、あわてながら、

「何で、松本さんが出て来るの?元カレは確かに肉食系と思うけど…。」

 奈々子は、二人から目を反らした。

 いきなり、松っつんこと、松本智也の名前が出てびっくりしたからだ。

 二人は、ニヤニヤしながら、

「今日、また、ほのぼの行こうよ!四人で。私、8時上がりだからさ。」

「あら、いいわね。瑞希ちゃん。じゃ8時半くらいする?確か松っんは、早番だったから、大丈夫だと思うけど。奈々子ちゃん声かけといてね。あっ奈々子ちゃん。大丈夫だよね?」 

 奈々子はうなづいた。 

「じゃお願いね。」

 やよいは、手に書類を持つと、"打ち合わせにおくれちゃう"と言って、ロッカーを後にした。 

「あっ、私も行かなきゃ!ミーティング。奈々子ちゃん、また、夜ね~!」

 瑞希もバタバタとロッカーを出ていく。

 二人が出ていくといつのまにか、ロッカーには、奈々子だけになっていたため、今までにないほど大きなため息をついた。

 松っつんこと、松本智也に心引かれ始めたのはいつだったのか、ふと、そんなこと考えだしていた。
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