未来絵図 ー二人で歩むこれからー 

 イベントも折り返しに差し掛かる。メインイベント、お見合い大作戦の初日はお客様もいつも以上に多くしかも、智也、隼、新司をお見合いイベントに出そうと総支配人が企み、社長が止めに入ると言う事態にまで発展した。

 智也のことを応援していた社長は、、今、いい感じらしいと聞いていた。そのため、どうしても阻止したいと、社長らしくない行動をとってしまったと反省していた。

"あの人達は参加しないの~?"と、ちらちらと店頭に立つ隼と新司の様子を窺う参加者たち。
「俺、困ってないし。」
王子スマイルの隼が毒つくが、それさえも、     "きゃ~。!!"と言われ、しおりと奈々子は苦笑い。
「お見合いより、体験に参加して欲しいっす!」
にかっと笑うと"する、する~。"と、黄色い声が響いた。

 だが、一番は囲まれていたのは、智也だった。付きまとわれては囲まれて。
「お客様。仕事の邪魔になりますから、しつこいのは困ります。」
 最終的には、怒りを秘めた爽やかスマイルでみんなを一撃し、仕事をしていた。

 奈々子のショップは売り上げを順調に伸ばし、最終日を迎えた。10日間ちょっとしたセクハラはあったものの、懸念したような事態は今のところなかったのだがー

 お昼を過ぎたところで、スーツをパリッっと着こなす男性客が訪れる。イベント2日目から連日、奈々子の体験に参加したり、ショップを訪れたりしていた。

「こんにちは。」

奈々子は声をかけられ、会釈をする。すると、手首を掴まれた。奈々子は、ビクッとしてしまい、とっさに、手を引くがさらに力を入れられる。

「夜、ご飯行きませんか?その後も付き合ってもらうと、嬉しいけど。」 

手首を掴んでいる反対の手を、奈々子の腰に回し、引き寄せられた。みんなそれぞれ接客中で持ち場を離れることが出来ずにいた。

「ねっ?」

 耳元で言われ、奈々子は吐き気がした。"やめて下さい。……困ります。"弱々しく呟く。怖くなって、目をぎゅっとつぶった。すると、ふと、拘束された手が弛んだ。

 そこには、智也が男性客の手を縛り上げ立っていた。

「お客様。大変目立っています。嫌がる女性にそのようなこと。皆さんが証人ですよ。早く立ち去られた方が懸命かと。」

 丁寧な言い方だが、にこりともしない智也からは相当な怒りが伝わる。その男性客は、智也の手を振り切り、"思わせ振りな態度するなよ!"と、去っていった。



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