未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「…。私。…本当に、松本さんが好きで。」

 ゆきは、震えながら涙をながし、いつもの強気な態度はまったく見られない。

「嶋田さん。どんなことをしても手に入れる。そういったけど、違うよね?残念だが、今回のことですっかり信頼関係がなくなってしまったよ。契約は今回限りということで。」

 社長がゆきに投げ掛ける。ゆきは、会議室全体を見渡し、小さく一礼したあと、会議室を走り去った。"嶋田さん!"総支配人が追いかけるよう走り出そうとした時、智也から冷たい声が発する。

「総支配人!あなたはまだですよ。」

「なんだ?松本。その態度は!?社長のお気に入りだからっていつも、いつも。」

「奈々子に言った言葉を訂正してください。」

「は?誰がこの女に!」

「総支配人!!!」

 さらに、声に力を入れる智也を奈々子は止める。

「松本さん、大丈夫ですから。…それより、約束を守っていただかないと。ね、総支配人。」

「約束?」

「えぇ。自分でおっしゃいましたよね?売り上げが3倍になったときは、セクハラ発言等の非礼の数々に対して、土下座でもなんでもして、謝罪してくださると?」

「まぁ、売り上げは4倍で、なおかつ今回の社長賞は奈々子さんかな?あっ、今回も、でしたっけ?」

 奈々子の言葉に、さらに追い込みをかけるように、隼が睨みを聞かせながら言う。

「……!?ふ、不愉快だ!…失礼する!」

 総支配人は、会議室にいるみんなの冷ややかな視線に耐えられず、謝罪せずに、そそくさに去っていく。

 後日、総支配人に何らかの処分が下ったのは言うまでもない。


 会議室は、安堵した柔らかい空気に包まれる。社長の解散の声で、持ち場に戻り始め、会議室には、社長、オーナー夫妻、奈々子、智也、やよい、隼が残った。

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