未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
二人のご褒美は温泉旅行
 翌日、奈々子は自分の働くホテルA'Zのロビーのソファーに座り、人目を気にしながらソワソワしていた。奈々子は、3日の休暇だと知ってる人も多く、逢う人、逢う人に、"今日はデートですか?"なんて聞かれそのたびに、愛想笑いをしていた。

 奈々子のいつもの出勤スタイルは、チノパンにカットソーとあっさりとしたものだが、今日は、レースのカットソーに青とピンクの花柄のシフォンスカートにサンダル。どこから見ても、あの子いつもと違うっという格好で、デート仕様がバレバレである。

「奈々子ちゃん、おはよう。」

 制服姿のやよいと、瑞希が話しかけてくる。

「ひさしぶりな気がする~。」

「瑞希さん。1ヶ月ぶりくらいですか?」

「ねぇ。総支配人事件いらいだよね。」

 うん、うんと皆で頷く。その声が大きく近くにいた従業員から、チラチラと注目をあびる。総支配人は、多大なる迷惑をかけることも省みず、カルディオの回収に手を貸したり、嶋田さんに助言をしていたことがすぐに分かり、処分が、決まっていたが、その日の内に、辞表をだし、、社長も引き留めることなく、あっさりとした引き際だった。

 総支配人の後任は決まらず、智也が引き受けるのではないかとの噂や、外国の支店から誰か来るのではとの噂もあるが、暫くの間は、社長自ら表に出る形をてることとなった。

「今日は、今からどこに行くの?」

 瑞希に聞かれ、"えっと、温泉に1泊。"とはにかみながら、奈々子は答える。

「あっ、あのチケット使ってみた?」

 瑞希にニヤニヤしながら聞かれた奈々子は、"う、うん。昨日、使ったよ。"と瑞希から目線をそらしながら答える。

 あのチケットとは、やよいと瑞希に貰ったloverシリーズの中に入っていた、その下着を作っている下着メーカーの1着無料チケットと言うもの。期限切れ間違ったので、もういいかなぁと思ってたのに、昨日お店の前を通ってしまい、吸い込まれるように、足を踏み入れたのだ。

「あのチケットって従業員限定でしか、手に入らないって。」

「そうなの?」

「私、学生の時、そこでバイトしてたんだ~。だから、なんかあるときは、言ってね。やよいさんも。」

 瑞希が奈々子とやよいにニコッと笑ったところで、エレベーターから降り、こちらに向かってくる、オーナー夫妻と智也の姿が見えた。
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