未来絵図 ー二人で歩むこれからー
仕事終了後、みんなで店を閉めてロッカーに向かっていると、奈々子が隼に声をかけた。
「隼くん。一応、栄転なわけじゃない?お祝いしなきゃね。」
その言葉にみんながふと足をとめる。
「お祝いしてくれるんですか?」
隼が奈々子をじっと見つめている。しおりと新司は、その様子を観察している。後ろから仕事を終えた智也がロッカーに向かってくるのが分かる。一瞬、隼は、智也に視線をやるがすぐに、奈々子に向き直る。
「手料理食べたいです。今日。今から。」
いつもより顔を近づけ、艶っぽく言われる。
「えっと。」
しおりと新司は隼の行動を咎めようとはしない。
「奈々子の手料理をみんなでご馳走になろうか?」
気が付くと奈々子の後ろには、笑った顔の不機嫌な智也の姿があった。隼は、"チッ"と舌打ちしたあと、智也に向かって、"俺のために作ってくれるんですよね?お祝いだから。"と智也に挑戦的な顔をする。
「じゃ、みんなで来る?うち、近いし。」
奈々子の提案に新司は残念そうに、"今日は、予定があるんっす。"と帰っていったが、しおりは"楽しそうだから行きます!"とノリノリであった。
職場を出たとこで、しおりは、お祝いにはワインと急に言い出し、コンシェルジュの松本さんに選んでもらわないとと、智也を引きずっていった。
その際、智也は隼に、ボソッ何か言ったのだから、奈々子には何を言ったのか分からなかった。
「隼くん。行こうか!材料は昨日買い物して、色々あるから、何とかなりそう!」
「今日、松本さん来る予定だったんでしょ?」
「さぁ、どうかなぁ。」
隼が切なげに見る視線にやっぱり奈々子は気付かない様子であった。ふたりは、奈々子の家へと向かった。