イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
「君に、いいものあげるよ。」


にこにこと不気味なほどにハンサムに笑いながら、鈴木さんはシャツの胸ポケットに手を入れた。


「いりません!そんな手には乗りませんよ?また騙すんですよね」


傍まで鈴木さんがやって来たので、私は語気を強めると背を向けた。


「騙すだなんて人聞きの悪い。試作品、チョコレートだよ」
「え!?」


チョコレート!しかも試作品と聞いて、私の気持ちが傾かないはずなんてない。
つい勢い余って豪快に振り向いた私は、まさかこんなに近くに、鈴木さんがいるとは思いもせずに。

行進する体勢だった私から鈴木さんに、不可抗力の。
エルボー直撃。


「__わ!!す、すみません!」


と、目を見開いている間にも、思わぬ一撃を食らった鈴木さんはくらりと体勢を崩し、やたらゆったりとスローモーションで、噴水の中に尻餅の格好で着水した。

言うまでもなく、頭からお尻まで全部、びしょ濡れ。


「う、うわぁ……」


注意が足りなかった私のせいではあるんだけど、勿論痛々しくて大変申し訳ない気持ちで一杯なのだけど。

ひ弱すぎや、しませんか…?


「着替え、会社にあるカラ。」


ザバザバの水を全身から滴らせて、私の真向かいに直立する鈴木さんの声は、震えていた。


「じゃ。」
「あのっ、鈴木さん!」立ち去ろうとする相手を、私は咄嗟に呼び止めた。
「気にしてません。事故ですカラ。」
「……」


語尾に変なイントネーションがついた鈴木さんが歩く道には、水溜まりが作られる。
くしゃみの音が、静かな遊歩道にこだまする。夜の匂いを含んだ風は、冷えてきた。


「あのっ!」私は小走りに追い掛けて、鈴木さんの腕を引いた。「うちのアパート、すぐそこです。」
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