イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
足を引き摺るようにして歩き、気が付けば私は会社を出てすぐの、遊歩道を歩いていた。

恨めしいほどの、快晴。
噴水の前のベンチに、くったりと腰を下ろした。きらきらと水飛沫が上がる。眩しくて目を細めた。


『辰巳っていつもチョコレート食ってるよな。俺にもひとつちょうだい!』


この製菓会社に日浦と同期で入社したのは、六年前。販売店勤務をした後、この春から本部の営業に配属になった日浦と久しぶりに再会して。

同期ということもあって、飲み会をしたりさっきみたいにお昼を一緒に食べたりするうち、二人で出掛ける関係になった。


『今度さ、一緒にチョコレート食べに行かない?俺、辰巳のこと前からいいなって思ってたんだ。』


お休みの日に同じ会社の人と私服で会うのは、かなり新鮮で緊張した。お洒落なバーでお酒を飲んで、いつものチョコレートをふたりで食べた。

そして帰り道、忘れもしない。
星が綺麗で、星座の形が空にくっきりと見えたこと。不意にその視界は覆われて、日浦の唇からお酒と、さっき食べたチョコレートの甘い匂いが漂ったこと。

啄むようなキスのあと、角度を変えて深い口づけを交わしたことを。


『いきなりキスして、ごめん。俺、ちょっと焦っちゃったかな』


私は首を振るのが精一杯で、きっと真っ赤になっているであろう頬を隠すために、顔を背けた。
全部全部、私にとっては大切な甘い記憶で、今でも昨日のことのように、つぶさに思い出されるのに。
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