イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
チョコレートの箱を開けて、摘まんだ一粒を一口かじる。


「け、結婚しますって……。しかも、秘書課の角倉さんと……?」


甘い記憶は真っ黒に塗り替えられた。一瞬にして。


「私は、なんだったの……?」


潤んだ声になった。
涙がどんどん溢れてくる。

私は、“彼女”ではなかったんだ。


「ただの同期で、デートしてキスしたから勘違いしちゃった痛い女、ってこと……?」


この歳にもなって、まともに恋愛した経験がない私には、まったくもって彼の気持ちが掴めない。


「バカだ、わたし……」


チョコレートが口内で溶ける。甘いはずの一粒が、今日はしょっぱく感じる。
もう一粒食べよう、涙と一緒に飲み込んだらまた次、次と。がむしゃらにどんどん、カカオが喉にむせるくらい、口の中へと詰め込んでいたとき。


「この匂いは__、」


突然背後で、声が聞こえた。
くぐもっていて聞こえづらいその男の声に、私は引っくり返るくらい驚いた。
恐る恐る振り向いてみる。


「人気洋菓子店エクリュのチョコレート、キャラメルソース入り。」


っ……!?

再度聞こえた声は、流暢な言葉で。
キョロキョロと周囲を見回していると、雑誌を顔に被って木陰で寝ている人物が、いきなり勢いよく起き上がった。


「やっぱり、当たりだ。」


じいっと、穴が空くくらい、私が持つチョコレートを見つめている。
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