最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 お、お願いされても困ってしまう。
 だって精霊の力なんて、どうすれば使えるのかわからない。
 公爵家の中庭のときは私の意思とは関係なく、勝手に風が暴走してしまった感覚だったし。

「ふかく考えなくていいです。ただふつうに、キアラさんの中の風をかんじてください」

「いや、普通って、自分の中に風があること自体がすでに普通じゃないというか……」

「それを自然と捉えるべし。ジンの風がキアラの命の起源なり。それなくしてキアラは世界に存在せず」

「……ジン様が私の命の源……?」

 考えてみれば、その通り。
 自分の中に精霊の血が流れているとか、異世界人の血が流れているとか、だったら自分は化け物だとか、モヤモヤ悩んではいるけれど……。

 化け物だろうがなんだろうが、そのふたりの存在がなければ、私はこの世に生まれてくることすらできなかったはずだ。

 だからといって、異質な血は簡単には受け入れがたい。
 でも受け入れるもなにも、その異質な血の組み合わせがなければ、そもそも私はここに生きてもいない……。

「……あ、あれ? なんだか、ニワトリが先か卵が先かの論争になっちゃった気がする」

「ですからキアラさん、卵のように頭の中をまっしろにしちゃえばいいんですよ」

「深く考える必要はなし。なにも複雑なことはなし。キアラの中に風があるのは、当たり前な事実なり」
< 111 / 162 >

この作品をシェア

pagetop