最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「残念でしたわねぇ、王子様。せっかく玉座に手が届……」
「貴様、私の前でキアラ様への悪意をさらしたな?」
オルテンシア夫人の声が、エヴルの低い声によって掻き消された。
場の空気を一変させるほど冷え冷えとした声に、それまで優位を確信していた夫人の笑みが引っ込む。
「……それがなんだと言うの?」
「貴様を斬る」
断言するエヴルの全身から、強烈な怒りの念がユラユラ立ち昇っている。
射抜くように夫人を見据える鋭い瞳は、氷よりも冷淡だった。
「私は騎士として、か弱き婦女子を守る誓いを立てた。……だがキアラ様に仇なす者であれば、それが女だろうが情けをかけるつもりは微塵もない」
これがあの温厚なエヴルかと疑うほど、吐き出す言葉のひとつひとつから、臓腑が縮むような冷酷な凄みが滲む。
憤怒の感情が、彼の形相を美しい魔物のように変えていた。
「キアラ様の命を狙う愚か者よ。私の剣に討たれ、己の愚行を悔いながら死んでいくがいい」
「あら、大層ご立派な覚悟だけれど、この大勢の兵士を相手にたったひとりでどう立ち向かうつもりかしら?」
イフリート様とノーム様が、無念そうにクッと唇を噛んだ。
モネグロス様によって力を抑えられているとはいえ、人間相手に戦えるだけの能力は、その気になれば発揮できるのだろう。
でも神と精霊の理を破ることはできない。
ここは神殿という、神の領域に最も近い場所。
きっといまも神々の目が及んでいるのだろう。
よりによってこんな所で、堂々と禁忌を犯すわけにはいかない。
「貴様、私の前でキアラ様への悪意をさらしたな?」
オルテンシア夫人の声が、エヴルの低い声によって掻き消された。
場の空気を一変させるほど冷え冷えとした声に、それまで優位を確信していた夫人の笑みが引っ込む。
「……それがなんだと言うの?」
「貴様を斬る」
断言するエヴルの全身から、強烈な怒りの念がユラユラ立ち昇っている。
射抜くように夫人を見据える鋭い瞳は、氷よりも冷淡だった。
「私は騎士として、か弱き婦女子を守る誓いを立てた。……だがキアラ様に仇なす者であれば、それが女だろうが情けをかけるつもりは微塵もない」
これがあの温厚なエヴルかと疑うほど、吐き出す言葉のひとつひとつから、臓腑が縮むような冷酷な凄みが滲む。
憤怒の感情が、彼の形相を美しい魔物のように変えていた。
「キアラ様の命を狙う愚か者よ。私の剣に討たれ、己の愚行を悔いながら死んでいくがいい」
「あら、大層ご立派な覚悟だけれど、この大勢の兵士を相手にたったひとりでどう立ち向かうつもりかしら?」
イフリート様とノーム様が、無念そうにクッと唇を噛んだ。
モネグロス様によって力を抑えられているとはいえ、人間相手に戦えるだけの能力は、その気になれば発揮できるのだろう。
でも神と精霊の理を破ることはできない。
ここは神殿という、神の領域に最も近い場所。
きっといまも神々の目が及んでいるのだろう。
よりによってこんな所で、堂々と禁忌を犯すわけにはいかない。