最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「私ひとりで充分だ。我が命と騎士の誇りにかけてキアラ様を守りきってみせるとも!」

「いいでしょう! 我が国最後の王子が愛に殉じる様を、この目で見届けてさしあげますわ!」

 夫人の構えたボウガンから勢いよく放たれた矢が、真っ直ぐエヴルに襲いかかる。
 エヴルの剣がそれを打ち払ったのを合図のように、大勢の兵士たちがワッと飛び掛かってきた。

 剣と剣がぶつかり合う金属音が次々と洞窟内に充満し、耳の奥を掻き乱す。

「エ、エヴル!」
「キアラ様! 私の側から決して離れないでください!」

 多勢に無勢の無理な戦いを、エヴルの類まれな身体能力が可能にしていた。
 細身の剣が縦横無尽に踊るたびに、刀身の光が残像になって目に焼きついていく。

 漆黒の騎士が全身を駆使して敵の剣を躱し、的確な一撃で次々倒していく姿を、私はノーム様と強く抱き合いながら必死に目で追っていた。
 頑張って! 負けないでエヴル!

「ま、先ずは女たちからだ!」
「……!?」

 エヴルに手こずると判断した兵士たち数名が、いつの間にか私たちの背後に回り込んでいた。
 剣を頭上に高く振り上げ、容赦なく飛びかかってくる姿を私は呆然と見上げる。
 ああ、もうだめ! 斬られるー!

―― ビッダーーン!

 「……え?」

 切りかかってきた兵士が、その場で思いっ切り前のめりになって転んだ。
 潰れたカエルのようなポーズで顔面を強かに地面に強打し、そのままピクリとも動かなくなってしまう。
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