最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「ね、ねえ? なんか変よ? それ、なに?」
 不安そうな夫人の声に、閉じかけていた私の意識が引き戻される。

 両目をこじ開けると、夫人がなにかを警戒するようにジリジリと後ずさっていくのが見えた。
 夫人の目は私を見ているというよりも、私の背後の岩壁を見ているようだ。

 のろのろと首を動かして背後を確認すると、すぐに夫人の警戒の意味がわかった。
 私が背中をあずけている部分の岩が、いつの間にか濃い灰色から黄色へと変色している。

 いや、違う。これは色が変わっているんじゃなくて。
 ……砂だ。岩が、砂に変化している?

 どうしたんだろうと疑問に思う間もなく、岩壁が私を中心にどんどん砂へと変質していく。
 色もくすんだ黄色から、砂金のような鮮烈な黄金色へと輝き出し、あっという間に岩壁全体が巨大な砂金の壁に変わってしまった。

―― ズズズ……。

 背中に、不思議な振動を感じる。
 まるで砂同士が意思を持って擦れあっているような、そんな生命感のある動きを感じた瞬間……。

「……!?」

 巨大な砂壁全体がいきなり弾け飛んで、あおりを食らった私の体が引っくり返りそうになった。

 莫大な量の砂金が、刹那に空間すべてを黄金色に染めたと同時に、その圧巻の光景がまた瞬時に変化する。
 砂のひと粒ひと粒が、霧雨のように細く柔らかな水へと変わった。
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