最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「キアラ様、私はずっとあなた様のお側におります。いついかなる、どんな時でも、必ずやキアラ様を守り続けると誓います」

 エヴルの胸に頬を預け、私は何度も何度もうなづいた。
 この胸に誓った想いを、私もエヴルも生涯守り続ける。
 近くて遠い場所から見守ってくれている存在を信じながら。

 涙に濡れた顔を上げて、私は窓から空を見上げた。
 青空に浮かんだ、あんなにも大きくて真っ白な雲を風が悠々と運んでいく。
 この涙もきっとすぐに、風が乾かしてくれることだろう。

 彼らが見守ってくれているのなら、私はいつまでも泣きはしない。
 立ち止まってはならない。
 私は思いのままに、信じるままに、望みを叶える誇り高い風になろう。

 火や、土や、水や、黄金のように輝く太陽のもとで、愛するエヴルの隣で彼を守り続けよう。
 そしてきっと私たちは、次の世界になにかを繋げていくんだ。

「キアラ様、私たちはここから始まるのです」

「ええ、エヴル」

「……とりあえず、着替えから始めましょうか」

「あ、そういえば私、夜着のままだった」

 私とエヴルは顔を見合わせ、ふふっと笑い合った。
 バルコニーから吹く風が、祝福するように私たちの髪を撫でて通り抜けていく。


 ここから始まる。
 神話の時代に始まった物語が、またここから始まる。
 私は誇り高い風を継ぐ者として、胸を張ってこの世界で生きていく。

 どうか見ていてください。
 モネグロス様、アグア様。
 イフリート様、ノーム様。

 そして……ジン様と、ジン様の愛した人。


 私たちはしっかりと手を繋いで、今日を始めるための一歩を踏み出した。



      【END】



< 161 / 162 >

この作品をシェア

pagetop