乙女は白馬に乗った王子を待っている

翔太が、駅からマンションに向かって歩いていると、いつもの二人の姿が前方に見えた。急いで二人に追いつく。

「さやかちゃんとゆり子さんじゃない。どうしたの? 今、帰り?」

さやかとゆり子は同時に声をあげた。

「うん。そこでばったり会って。」

二人ともデートの帰りだった。
ゆり子はあの後、車で送る、という東城の申し出を固辞して、渋谷でちょっとした買い物をして帰ったし、さやかは、フレンチを食べた後、高橋に急な仕事の連絡が入ったので、そこでお開きになった、というわけだった。

「翔太こそ。明日、帰ってくる予定じゃなかったっけ?」

一日早い帰りに、ゆり子が訝しがると翔太は苦笑いをした。

「なんか、見合い話がいくつも来てて、慌てて逃げ帰って来た。」

「えー!? お見合い?」

「うん。やっぱさー、親父たちは、地元の人と結婚して欲しいらしくてさ、なんかすっげーうるさいから、逃げて来た。」

「わかるー。私も田舎に帰ると見合いしろ、結婚しろ、ってうるさかったもん。
 30過ぎちゃってさすがにそんなハナシもあんまり来なくなったけどね。」

と、これはゆり子。

最近のお見合い話なんて、子つきの再婚か、50過ぎ(!)の独身とか紹介されちゃうのだ。ゆり子は田舎に帰ると自分の市場価格をイヤでも確認させられるハメになる。こと、結婚に関しては、田舎の方がずっと現実的でシビアだ。


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