乙女は白馬に乗った王子を待っている

「本当にねー、こっちはちゃんとやってるからほっとけっつーんだよなあ。」

翔太は夜空にむかって息を吐き出した。

ちゃんとやってる……か。何とか派遣で食いつないでいても、先々のことが心配で心配でしょうがないのに、「ちゃんとやってる」なんて言えるのだろうか。

「翔太はさ、ちゃんとやってるって言えるかもしれないけど、私なんて、派遣だったし、
 今だって、正社員なんてとても言えるような状態じゃないし、何だか先が見えて来ないよー。」

ゆり子が愚痴をこぼすと、のん気なさやかがおっとり言った。

「大丈夫だよ〜。結婚すればいいんだしさ〜、ゆり子は東城さんがいるし。」

「…いや、東城さんは、いいよ。」

「え〜、何で? だって、表参道のブランチ連れて行ってくれたんでしょ?すっごくゆり子のことが好きみたいだし。いいんじゃない。」

「だって、ハゲでデブだもん。あんなヤツとやりたくない。」

勢いに任せてぽろりとこぼれたホンネに、さやかと翔太は目を丸くした。

さやかなんて顔を真っ赤にしている。

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