乙女は白馬に乗った王子を待っている

イケメン専務と有村美香はタイミング良く(!)すれ違ってばかりである。

誤解を解こうと、イケメン専務は必死になって、有村美香を捕まえようとしていた。
有村美香に会いに約束の場所に行こうとしたその時、婚約者が事故に会い、病院から電話がかかって来た。

イケメン専務は慌てて病院に駆けつける。テレビの画面は、約束の場所で待ちぼうけをくらう有村美香をずっと写していた。

「……何で、ケータイで連絡しないんだろうねぇ? っつーか、このタイミングで事故、ってドラマでしか有り得ない展開なんだけど。」

例によって、ゆり子の切なさのかけらもない言い草にさやかは鼻白んだ。

「だって、有村美香に電話して何て言えばいいのよ……、
 ほら、婚約者が可哀想で、婚約破棄を言い出せなくなっちゃってるじゃない、イケメン専務。」

イケメン専務が、怪我をしてすがりつく婚約者を捨て置く事ができない。それで、有村美香のところにいけなくなっちゃっているのである。

「でもさ、こうやってズルズル付き合ってたら、ますます婚約破棄なんかできなくなるんじゃねーの。
 結局みんなを傷つけるだけじゃん。いい人でいたいから断れないだけじゃね?」

急に翔太が口を挟んで来た。

< 121 / 212 >

この作品をシェア

pagetop