乙女は白馬に乗った王子を待っている
イケメン専務と有村美香はタイミング良く(!)すれ違ってばかりである。
誤解を解こうと、イケメン専務は必死になって、有村美香を捕まえようとしていた。
有村美香に会いに約束の場所に行こうとしたその時、婚約者が事故に会い、病院から電話がかかって来た。
イケメン専務は慌てて病院に駆けつける。テレビの画面は、約束の場所で待ちぼうけをくらう有村美香をずっと写していた。
「……何で、ケータイで連絡しないんだろうねぇ? っつーか、このタイミングで事故、ってドラマでしか有り得ない展開なんだけど。」
例によって、ゆり子の切なさのかけらもない言い草にさやかは鼻白んだ。
「だって、有村美香に電話して何て言えばいいのよ……、
ほら、婚約者が可哀想で、婚約破棄を言い出せなくなっちゃってるじゃない、イケメン専務。」
イケメン専務が、怪我をしてすがりつく婚約者を捨て置く事ができない。それで、有村美香のところにいけなくなっちゃっているのである。
「でもさ、こうやってズルズル付き合ってたら、ますます婚約破棄なんかできなくなるんじゃねーの。
結局みんなを傷つけるだけじゃん。いい人でいたいから断れないだけじゃね?」
急に翔太が口を挟んで来た。