乙女は白馬に乗った王子を待っている
「……ああ、悪い、悪い。」
体を起こしながら、高橋は、自分の手でほっぺたをぱんぱんと叩く。
それから伸びをしてゆり子の方に腕を差し出す。
「?」
ゆり子が困惑していると、高橋が「ほら、立たせてくれよ。」と言った。
「……ああ。」
ゆり子は頷いて、高橋の腕をむんずと掴み、ぎゅっと引っ張った。
さすがによれよれの姿だ。
「一旦帰られますか?」
「いや、今日は外に出る予定ないから、このまま働く。」
「ええっ!かなりヒドい格好ですよ? しかも床に寝てたから埃だらけじゃないですか。
それに、ちょっと臭くないですか?」
「かもね〜、でも、オレの姿を見るのは権藤だけだし。」
「私には気遣い無用ってことですか。」
少し怒気を含んだ言い方に、高橋はすまして答えた。
「違うよ。権藤に気を許してるってことさ。」
「……まっ、またっ。よ、よくそういう事を言いますねぇ、彼女がいるくせに。」
なぜだか、いつもみたいな軽口ではなく、本気モードのゆり子の返事に、高橋は意味ありげな顔をした。