乙女は白馬に乗った王子を待っている
さやかの夢をせせら笑うばかりだったゆり子は、
高橋がそれをバカにすることなく、それどころかきちんと認めている事に、
なんというか……、
敗北感のようなものを感じた。
「だから、そんな風に思ってるさやかちゃんの期待に応えてあげたい気もするんだよなー。」
高橋は、自分は浮気するかもしれない、とふざけたことを言いつつ、その一方で、永遠の愛を誓って結婚ができれば幸せだ、とも言う。
もしかすると、高橋でさえも、愛などという計り知れない人の気持ちに絶対的なものを求めてやまないのかもしれない、とふと思った。
「……っていうか、じゃあ、社長はさやかを愛しているんですか?」
「うーん、そう言われると微妙?」
「何なんですか、それは。」
「それに、さやかちゃんがオレを愛してるかも微妙。オレの容姿と肩書きは気に入ってるみたいだけどさ。」
「………」
しばらく考えて高橋は付けたした。
「だけどね、30過ぎて、独身で、おまけに安定した仕事についていないようなコで、
本気で愛する人との幸せな結婚をするって信じているような女ってちょっといないよ。
こういうことを信じて堂々と主張できるのってやっぱり素敵じゃない?」
そう言ってにっこり笑う高橋に、後ろからハンマーで思い切り打ちのめされたような衝撃を覚えた。
……完敗だ。社長にもさやかにも。