乙女は白馬に乗った王子を待っている
その夜はそうそうに切り上げて家に帰った。
高橋もさすがに疲れがたまっていたようだし、ゆり子もそれ以上飲む気にもなれなかった。
帰り道、ゆり子は一人しょんぼりと歩いていた。
何でこんなに落ち込む必要があるんだろう?
だって、さやかが三十過ぎて中二病か!と突っ込みたくなるほど世間知らずで、痛い女だってのは紛れもなく、事実のはずだ。
イケメン専務が壁ドンしてくれるとか、最初のデートの時には薔薇の花束を持って来てくれるとか、白馬に乗った王子様が自分を救いにやってきて、ひざまずいてプロポーズしてくれるとか、そんなこと……、みんな夢物語でしかない、っていうのは、女を三十年やっていれば普通は誰だって気付くはずだ。
それが、世間ってものだ。
ゆり子はずっとそう思って生きてきたし、実際高橋に会うまではそれを否定するような人はいなかった。
それが、高橋は、あの笑顔でさやかのことを素敵だ、と言い切ったのだ。
でも、だからそれがどうだっていうのだろう。
だから、高橋はさやかと付き合っているのだし、それでさやかが幸せなら、私が横から口を出すことじゃない。落ち込むようなことじゃないはずだ。
ゆり子は必死に自分に言い聞かせながら、家にたどり着いた。