乙女は白馬に乗った王子を待っている
家についてみると、珍しくさやかが一人でくつろいでいる。
「あれ、珍しいね。バイトは?」
「……うん、もしかして高橋さんと食事にいけるかなーって思って、夕方に上がったの。」
ゆり子はぎくりとする。
でも、私は社長に言ったのよ、さやかと食事に行けば?って。
行きたくない、って言ったのは社長の方なんだからね。
心の中でそんな言い訳をしながら、ゆり子はさやかに言った。
「いやあ、社長、本当に忙しいから優雅なデートとかしばらく無理だと思うよ。」
「ふーん。」
冷たい言い方にますますゆり子はますます狼狽えた。
「いや、あの、社長は本当にさやかのこと、大事に思ってるよ。」
「……ふーーん。」
「だって、社長、いつもさやかのこと気にしてて、私に様子聞いてくるもん。」
「……ふーーーーん。」
相変わらず冷ややかな態度で、ゆり子のことをじっと見つめる。
ゆり子の知っているさやかは、鈍いほど無邪気で天真爛漫な女で、今、目の前にいるのは知らない誰かのようだった。