乙女は白馬に乗った王子を待っている
多分、さやかなら目の色変えて驚くか怒るかするんだろうなァ、と思って、高橋はどこに置いているんだろうか、とちょっと気になる。
完璧に隠しそうだ。
クローゼットの奥の方とか、ベッド脇の引き出しの一番下とか。
きちんと揃えてしまっている様子が想像されてくすくす笑ってしまった。
「何?何がそんなにおかしいの?」
翔太がきょとんとした顔をしている。はっと我に返ってゆり子は慌てた。
それから、すき焼きを食べてそのまま泊まりこみ、月曜日の朝、早めに自分の家に戻って、支度をして会社に来たという訳であった。
さやかは夕べ帰ってきたようで、リビングに旅行の荷物が少し散乱していて、こたつの上にはお土産が置いてあった。
ちょこんと入った帝国ホテルのロゴがやけに目につく。
上品なクッキーの詰め合わせであった。
開封する気にもなれず、そのままにして会社へ向かった。
ゆり子が事務所に着いた時、やっぱり高橋はすでに来ていた。
相変わらず爽やかな顔をしている。ゆり子が、おはようございます、と声をかけると、機嫌良くにっこり微笑んだ。
「おはよう。クッキー食べた?」
「あ、いえ。実は夕べ家にいなかったもので、まだなんです。」
「そうなんだ。どっか行ってたの?」
ええ、ちょっと……とごまかそうとしてゆり子はやめた。