乙女は白馬に乗った王子を待っている
その時、目の前の電話が鳴ったので、高橋との話はそれきりになった。
その月曜日も忙しかった。
本当に、会社が軌道に乗り始めたみたいでとぎれなく業務が積み上がっていく。
派遣の登録者の把握と、依頼の来ている仕事を分かりやすく整理して、必死でマッチングを考える。
高橋は、時には、登録者に合いそうな仕事を考えて、そういう仕事がないかと探し出して営業をかけたりする。
そこまでして、派遣者一人一人が満足できる仕事を見つけ出そうと奔走する高橋にゆり子もいつのまにか感化されていた。
昼前に山根はるかから電話がかかってきた。
例の、飲食店に勤めていたが、体をこわして辞めたという女の子だ。
電話の向こうの声は興奮していた。
「権藤さんですか?山根です。」
「どうしたの、はるかちゃん。」
「派遣、決まったんです!もう、私、嬉しくて嬉しくてすぐに権藤さんに報告しなくっちゃ、って思って。」
喜びにあふれた声に、ゆり子の胸の中にじわじわと熱いものがこみあげてきた。
「そう、おめでとう!良かったね。」
「はい!あの時、登録の面接で、権藤さんが私のために、一生懸命になって下さって、
それで、私、自分には何が出来るかとか、どんなことをしたいかとか、あんなに色々考えたのって、本当に初めてだったぐらいなんです。
だから、面接でも、堂々と自分の考えや希望を言えましたし、その結果の採用だから、本当に嬉しくて。」
「でも、これからが本番よ。
特に、山根さんの場合は紹介予定派遣だから、頑張れば夢の正社員よ。応援してるからね。」
それから少し話をして電話は切れた。
嬉しい!
ゆり子は我がことのように嬉しかった。