乙女は白馬に乗った王子を待っている
「そりゃ、……一応、社長ですし。
それに、私、帰ったら毎日毎日毎日毎日、さやかの愚痴を聞かされてるんですから。」
「何て?」
「どうして、連絡くれないの? どうして、ラインの返事をくれないの?
どうして、私と会ってくれないの? どうして……って、こうですよ。
たまには、さやかとゆっくり会ってデートしたらどうなんですか?」
「はあ、そうなんだ。」
少しだけ面倒そうな口ぶりだった。
ゆり子の心臓がどくんと脈うつ。
高橋は大してさやかに興味なさそうな感じがした。
それが嬉しかったのだ。
ゆり子は間違いなく嬉しかった。
そしてそれに気付いてどきっとしたのだ。
私って、かなり性格悪い……。
自分には翔太というれっきとした恋人もいる。
仕事もやりがいを見つけ、頑張っただけの手応えも感じていて、とても順調だ。
なのに、さやかが不幸になっているのを喜んでいる。
口先ではデートしてみたら、なんて言っていても、高橋にその気がないのを見て安心している……。
本来なら、友だちが悲しんでいるのを見て、何とかしてあげるべきなのに、私はこの状況を喜んでいるのだ。
「じゃ、田中さんに頼んでみるか。」
高橋はあっさりと言った。
「え?」
「確かに、さやかちゃんが可哀想だし、そもそもオレはブラック企業が大嫌いだからな。
自分の会社をブラックにするわけにもいかないだろう。
二人でこじんまりやって行くのも結構楽しかったんだが、会社のためには、ここらで人を雇って拡大していった方がいいのかもな。」
そっかー、田中さんが来るっていうことは、当たり前だけど、社長と二人っきりってことではないんだな。
そう気付いて、ゆり子は一抹の寂しさを感じた。