乙女は白馬に乗った王子を待っている

高橋が予約してくれていたというその店は、代々木上原の駅から少し住宅街に入ったところにある、洒落た雰囲気のフレンチで、ちょっとした隠れ家みたいな店だった。

「……高橋さんて、本当に素敵なお店、知ってますね。」

「素敵かどうかは、食べてみないとわからないけど。」

「………」

しれっという高橋にことばがつまる。さやかは気を取り直して話を続けた。

「来たことあるんですか?」

「一度だけね。なんか女のコが好きそうな店だな〜って思ったんだよね。」

「………」

また会話が止まる。

「何食べる?」

「……ああ、えーっと…何がオススメですか。」

「……いや、だから、一度しか来た事がないから……」

「あっ、そうか、そうですね。何か、ヘンなこと、聞いちゃいましたね、すみません。」

「いや……、別に謝らなくても……。」

なんだかむずがゆくなるような会話だった。

それに、高橋は、さっきのことが気になって目の前のさやかに集中できない。

それでも、運ばれて来た前菜のサーモンのテリーヌも、メインのローストビーフも素晴らしい一品だった。


< 194 / 212 >

この作品をシェア

pagetop