乙女は白馬に乗った王子を待っている
高橋が予約してくれていたというその店は、代々木上原の駅から少し住宅街に入ったところにある、洒落た雰囲気のフレンチで、ちょっとした隠れ家みたいな店だった。
「……高橋さんて、本当に素敵なお店、知ってますね。」
「素敵かどうかは、食べてみないとわからないけど。」
「………」
しれっという高橋にことばがつまる。さやかは気を取り直して話を続けた。
「来たことあるんですか?」
「一度だけね。なんか女のコが好きそうな店だな〜って思ったんだよね。」
「………」
また会話が止まる。
「何食べる?」
「……ああ、えーっと…何がオススメですか。」
「……いや、だから、一度しか来た事がないから……」
「あっ、そうか、そうですね。何か、ヘンなこと、聞いちゃいましたね、すみません。」
「いや……、別に謝らなくても……。」
なんだかむずがゆくなるような会話だった。
それに、高橋は、さっきのことが気になって目の前のさやかに集中できない。
それでも、運ばれて来た前菜のサーモンのテリーヌも、メインのローストビーフも素晴らしい一品だった。