乙女は白馬に乗った王子を待っている

事件はデザートが運ばれて来たときに起きた。

さやかはクリームとラズベリーがビスケットの横に上品に添えられたレモンタルトを頼んだ。
粉砂糖とチョコレートソースが上からふりかけてあって、華やかで手の込んだ一品だ。

「綺麗……。」

うっとりと見つめてから、一口、口に入れた。

……?

何だか、味がしない。

あれ、と思って、今度はもう少し、集中して味わってみた。

いや、やっぱり、ちゃんとレモンタルトの味がする。
さわやかな酸味と程よい甘さのクリーム。

でも……、美味しくない。
さっき食べたチョコレートサンデーの方がずっと美味しかった。

「あ……。」

さやかは突然気がついた。


ここのところ、鬱々とした気分になることが多かった本当の理由に。
今日、朗らかな気分で高橋に会いにくることが出来た理由に。

「……高橋さん。」

「何?」

「……あの、私……。」

さやかはそれっきり黙ってしまった。

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