乙女は白馬に乗った王子を待っている

「こっちにおいで。」

高橋はそう言って、両手を前に差し出した。
ゆり子が高橋に近づくと、ゆっくり抱きしめてくれる。
かすかに甘いバラの香りがした。バラの香りのする男、……なんか意外だ。
高橋だったら、ハバネロのような刺激臭の方が合うような気がした。

高橋の体は気持ちよくゆり子は目をつぶってうっとりとした。
高橋の胸に顔を押し付けると、心音のトクトクという鼓動がゆり子に伝わってくる。
規則正しく脈うつその音を聞いていると、何だか羊水の中でぷかぷか浮かんでいるような気分になってきた。

「……何か安心する。」

「安心していいよ。ずっと隣りにいるから。」

「本当に?」

「本当だよ。安心したい時はいつでも権藤を抱きしめてあげるよ。」

「私が一番?」

「……じゃなくて、権藤だけ。」

「信じていいのかなぁ……。」

「どうだろ。」

「いや、そこは、信じろよ、って力強く言うとこですよ?」

「権藤が先に疑うからだろ。永遠の愛を誓えよ。」

「結婚するんですか、私たち。」

「なんか性急だな。」

「だって、社長が言ったんじゃないですか、永遠の愛を誓って幸せな結婚が出来たら最高だ、って。」

「権藤、最後まで聞いてなかっただろ、続きがあるんだぞ、アレには。」


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