乙女は白馬に乗った王子を待っている

「権藤は?」

「ああ、私は性根腐ってますから。」

「そんなことないだろ。ちょっと皮肉っぽいところはあるけど、おおむね一生懸命でガッツがあるじゃないか。
 初めてのことでも果敢にチャレンジして、自分で試行錯誤して道を切り開いているじゃない。もっと自信持って堂々としろよ。」

高橋は真顔で応じる。


……嬉しい。
なんだか、めちゃくちゃ嬉しい。
一生懸命がんばって、それを認めてくれる人がいるって、こんなに嬉しいことなんだ。

ゆり子の顔から笑みと言葉が溢れ出た。

「私、最初は、一人で残ってすごく嫌だったんですけど、今は、本当にやりがい感じてるんです。
 派遣の登録に来る人って、将来を心配してる人って多いと思うんです。
 そりゃあ、すごく有能で出来る人は心配なんてないんでしょうけど、私みたいに、いつも不安で落とされたらダメージをくらっちゃう人もいっぱいいると思うんですよね。
 そういう人が、ウチに来る事で、ちょっとでも、自分もこんなスゴいことが出来るんだ!って思えるような仕事を探すことが出来たら、もう、本当に嬉しいんです。
 だからね、社長、実は、私、ここでもっと経験積んで、人材派遣の会社、興しちゃおうかな、って思ってるんですよ。」

ゆり子は、自分が滔々と語ったことを聞きながら、自分でもびっくりしていた。
そんなこと意識したこともなかったのに、気がつくと言葉が勝手に口から出て来ていたのだ。

口に出してから、

……ああ、私も、社長みたいに、自分の信じるところを突き進んでいきたいんだ……と、気付く。

「おおお、ライバル会社の登場かい。」

高橋は嬉しそうに言った。

「そ、その時はウチで田中さんを引き抜きますから、覚悟しといて下さいよ。
 あー、何か、しゃべってたらすごくいい気分になってきちゃった。さ、社長、ウチへ行きますよ!」

ゆり子はいやがる高橋の手を取って事務所を後にした。

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