乙女は白馬に乗った王子を待っている
こんな調子で、2時間の研修(実際には3時間近くかかった)を終えた時には、ゆり子はへとへとだった。

常識が通じない相手に何かを教えるのがこれほど難しいことだとは思いもしなかった。

「明日、7時32分のバスに乗れなかったら、会社の紹介はできませんから。絶対に遅刻しないでくださいね!」

叫ぶように念を押して山村を送り出した。
山村がいなくなって、自分の席に着くと、高橋が意地の悪い笑みを浮かべながらゆり子に言った。

「ちょっと叫びすぎじゃない?もう少し落ち着けよ。」

「……!」

ゆり子は絶句した。
ロクに準備期間も与えられず、いきなり言われたのだ。

しかも、相手は口も態度もなってないヤツだ。怒りでゆり子の顔は真っ赤になった。

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