乙女は白馬に乗った王子を待っている
ぱちんとリモコンのスイッチを押した途端、ぽろっと涙を流す女のアップが画面一杯にうつしだされた。
女が絞り出すような声でそっと訴える。
「専務……、私……、やっぱり専務のことが好きなんです……。」
画面はすぐに切り替わって、今度はイケメン専務の顔を写し出した。専務はすこし困ったような、おずおずとした顔でその女を見つめる。
さやかは、画面に釘付けになったかと思うと、一緒にホロホロと涙をこぼし始めた。
高橋は、目の前で起きている状況がいまいちつかめない。
「あ、あれ? さやかちゃん、なんで泣いてるの……?」
さやかは、潤んだ目で高橋を見つめた。
「だって……、切ないじゃないですか……。この婚約者、専務を愛してるんですよ。それなのに……専務は他の女性を愛してるんです。」
「そ、そうなの……?」
高橋が相づちをうつも、さやかは全く高橋のことなど全く気に留めていなかった。
そのまま10分も見続けていたら、高橋は退屈してきた。しかし、今となっては大粒の涙をぽろぽろこぼすさやかが隣りにいては、テレビのチャンネルを変える事などとてもできそうもない。
それに夢中でテレビを見ながら無意識に涙をこぼすさやかの姿は高橋にはちょっとした衝撃でもあった。