乙女は白馬に乗った王子を待っている
「やっぱりさー、女の子ってあんな風に口説かれてみたいの?」
コマーシャルになっても、うっとりしているさやかに、高橋はふいに声をかけた。
「え?」
「だから、あの専務。有村美香の手を取って、最後に『オレが好きなのはお前だけだ、信じて欲しい』って言ってたじゃない。
ああいうのが、嬉しいの、女の子としては。」
「そ、そうです!やっぱり、素敵な男性に力強く告白される、っていうのは、女の子の夢だと思います。」
「さやかちゃんも?」
「も、もちろんです。」
うろたえた言い方が可愛かった。高橋は、からになったグラスにワインを注いだ。
「もう少し飲まない? はい、乾杯?」
「あ……、乾杯。」
「じゃあさー、さやかちゃんの理想のデートの話をゆっくり聞かせてよ。それで、日曜日デートに行こう?」
「ほ、本当ですか?嬉しい!」
それから、さやかの目はらんらんと輝き話は尽きる事がなかった。
少し上気した顔で、はしゃぐさやかを見ているうちに、高橋は、自分が初めて女の子を誘ってデートらしきことをした時の事をぼんやり思い出していた。
高校に入ってすぐの頃、学校帰りにアイスクリームを一緒に食べない、と誘った声が震えていたのを今でも鮮明に憶えている。
その時にストレートの肩までの黒髪を垂らしながら、下を向いてこくんとうなづいた彼女のことも。
目の前のさやかが、その時の彼女と重なった。