婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「うわ~ すご~い お庭もあるし、露天風呂までついてるよ~! すごく贅沢なお部屋だね 圭司」
私はあちこちの襖を開けながら、興奮気味に声を上げた。
「そりゃ、10万もする特別室だからな… まあ こんな目的で来てもイマイチ盛り上がれないけど…」
圭司の言葉で、一気に現実へと引き戻された。
そうだった…
あまりの部屋の豪華さに、思わず浮かれてしまったけれど、わざわざ10万円もする『特別室』を取ってまで金沢にやって来たのは、全てストーカー事件(私が勝手にそう呼んでいる)を解決させる為なのだ。
しかし、せめて、もう少し安い部屋が空いていてくれたら良かったのになと、ため息が出る。
この三連休に前日の段階で空いてる部屋なんて、特別室くらいしかなかったのだ。
圭司は、必要経費だからと、あまり気にはしていないようだけれど…
10万円といったら、勇斗のチョコぴーがどれだけ買えるだろうなんて、主婦の私はつい考えてしまう。
まあ、10万円あっても、決して勇斗のチョコぴーには使わないのだけれど…
なんて…話は逸れてしまったけれど、とにかく圭司の言う通り、今の状況で『特別室』なんかに泊まったって、ちっとも嬉しくもないし、はしゃいでいる場合でもないのだ。
「ねえ 圭司! 早く松井くんに会って、一刻も早くこのストーカー事件を解決させちゃおうよ… きっと、フロントに行けば、ちゃんと松井くんにも会わせて貰える筈だから…」
私は急かせるように、圭司の腕を引っ張った。
「いや 待てって… あいつに会う前に一応色々と裏づけを取ってからじゃないと…」
「裏付け?」
キョトンと私は首を傾げた。
「ほら、あいつのシフト状況とか… ここ最近の様子とかさ… フロントじゃ教えて貰えないことを従業員から聞き出すんだよ」
「そっか もし、松井くんが昨日と一昨日の仕事を休んでたら、それは動かぬ証拠だもんね!」
それなら、松井くんだって素直に認めざるを得ないだろう
解決の糸口が見つかって、一気にテンションが上がってきた。
「いや 休んでたぐらいじゃ証拠にはなんないだろ ただアリバイがないだけで… それより、逆に休んでなかったら、あいつはシロで、そこはハッキリするけどな」
「あー そういうことね… わかった 取りあえず、早く誰かに聞きに行こうよ」
再び私は圭司の腕を掴んだ。
「いや 二人で行くより、俺一人の方が多分聞き出せると思う なつはゆっくり温泉にでも入っておいでよ」
圭司ははいと言って、私の前に浴衣とタオルを差し出した。