婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

「えー 私がいたら何でダメなの?」

私は何故そんな風に言われたのか、さっぱり理解できなかった。

「ダメじゃないけど… 噂好きの仲居さん見つけて声かけるから 隣になつがいたらやりにくい…」

あー なるほどね
色仕掛けってことか…

確かに、圭司が一人で声をかけた方が、仲居さんもうっかり口を滑らせてくれそうだけど…

でも…何だかな…
すっごく、モヤッとする

圭司はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、優しく笑って頭を撫でた。

「大丈夫だよ 俺がちゃんと聞き出しておくから なつは5階の露天風呂にでも行っておいでよ」

その言葉を聞いた瞬間、私は圭司の手をぱっと払いのけた。

「なつ?」

「ヤダ… 圭司にそんなことして欲しくない…」

私は必死に首を横に振りながらそう言った。

「そんなこと…って」

圭司がキョトンとした顔で私を見た。

「だから… この部屋に若い仲居さんを連れ込んで、ハニートラップみたいなことするんでしょ? 潜入捜査官みたいに…」

一瞬の沈黙の後、圭司がぷっと吹き出した。

「バカだね なつは… だから、テレビドラマの見すぎだって言われちゃうんだよ」

「何よ こっちは真剣に言ってるのに…」

涙目でそう言うと、圭司はグイッと私の腕を引いて自分の膝の上に座らせた。

「キャ!」

後ろからすっぽりと抱きしめられた状態で、圭司が耳元で囁いた。

「俺が声かけるのは、さっき休憩室でケラケラ笑ってたおばちゃん達で… そんなに色っぽい話じゃないんだけど」

圭司にクスッと笑われて、私はカァーと赤くなった。

「じゃあ 何で私をこの部屋から追い出そうとしたのよ」

そうだよ
圭司がそんなことするから、私はてっきり…

「追い出そうとなんてしてないよ」

「したじゃない この部屋にも露天風呂付いてるのに、わざわざ5階の露天風呂に行けって…」

「あー それは… じゃあ 自分で確かめてくれば? あの露天風呂」

「え?」

私は圭司に言われた通り、露天風呂のあるお庭へと出た。

「あっ!」

そっか… そういうことか
この露天風呂は、夜にならないと丸見えなのか…

何だか大騒ぎしてしまった自分が恥ずかしい。

「……あ じゃあ、私、5階のお風呂にでも行ってこようかな…」

エヘヘと誤魔化すように笑うと、私はそのままタオルを持って部屋を出た。


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