ねぇ、運命って信じる?

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ side恭護

綾乃に引っ張られて訪れた模擬挙式。…これでも結構忙しいんですけど…綾乃に訴えても”協力してほしいなら文句言わない!”と一蹴されてしまった。
見学が終わって模擬挙式にいたく感動していか綾乃だが竹田さんから連絡があったようで”和樹さん外に迎えに来てくれてるって!だから先に行くね〜”と嬉しそうに飛び出していった。
俺もそろそろ帰って持ち帰った仕事を片付けよう。車のキーを探しおもむろにポケットに手を入れたが…キーはあるのに…財布がない。急いで、来た道を戻ると彼女が財布を手に取っているところだった。
今でも未練がましく美羽の写真を持っていることを本人に知られたくなかったので、慌てて財布を取り戻したのだが、その瞬間彼女が悲しそうな顔をしたのを見て礼も言わずに奪い取ったのを失敗したと思った。
その後…一応お礼を言って足早にその場を去った。誤解を深めていることなど知らずに…。
彼女の写真を今でも大事に財布に入れているなんて口が裂けても言えない。彼女はもう俺を見てはくれないのだから…

それから数日後、たまたま仕事で昔住んでいたアパートの近くを通りがかり、つい懐かしくなって足を伸ばしてみたら…偶然アパートの管理人さんと行きあった。

最初は管理人さんも俺が誰かわからないようだった。それは当然のことで1年中入居者や引っ越していく人の出入りが多いのだ。3年前に突然引っ越した人間など覚えているはずないだろう。
「昔このアパートの203号に住んでいて、つい懐かしくて寄ってしまいした。引っ越しの際は挨拶も出来ず失礼しました。」
「203号室……あっ!あなた中原さんよね!雰囲気が変わって気付くのに時間かかっちゃった。」
「よくわかりましたね。3年も前のことなのに…」
すると管理人さんは少し話しにくそうに…
「ねぇ、あなたがこのアパートに住んでいた頃付き合っていた子いたわよね」
何故そんなことを突然聞くのだろう…それでもまだ続きがあるようなので
「えぇ、まぁ。」と曖昧に返事をした。
「あの子、あなたが引っ越した後必死に探していた事は知ってる?最初は別れ話で揉めたのかなって思ってたんだけど、あまりにも切実そうで少しだけ話を聞いたの」
「そうだったんですか……」
「ねぇ、ひとつ確認してもいい?」
「なんですか。」
管理人さんが神妙な顔で聞くので思わず身構えた。
「あの子、あなたのストーカーじゃないわよね?」
……ストーカー⁉︎…誰が?美羽が?
「…え?違いますけど、なんでそうなったんですか……?」
その言葉を聞いて管理人さんは安心したようだ。
「ここだけの話、あなたは突然引っ越して連絡も取れないのに彼女は何度も何度も訪ねて来て荷物もほとんど処分していったから別れ話の末、彼女がストーカーになったのかと少しだけ疑ったりもしたのよ。だから、あなたのことも覚えていたの…今となっては笑い話よね。それであなたの置いていったマグカップやアルバム、写真立てとか捨てられていたものが入っていた箱をひとつ持って帰らせてほしいって泣きつくから仕方なく条件付きで渡したわ。」
考えもしなかった…俺が消えた後彼女がどうしたかなんて。
しかも、そんな大切にしていたものまで捨てられていたなんて知らなかったしショックだった…引っ越しの際どこかに紛れ込んだままみつからないのだとてっきりそう思いこんでいたから。退院後いくら探しても見つからないはずだ…手元に残った一枚の写真をあの時捨てなくて正解だった。
「そうですか…それで条件というのは?」
「そうそう。”条件はもうここには来ないこと。もし彼が来たらあなたに連絡してもいいか聞いてOKなら連絡するわ。”って話したのよ。あの時は彼女自身不安定そうだったから…」
”そうだ、ちょっと待ってて”と事務所の引き出しをゴソゴソと何かを探しているようだ。それを手に持って戻ってきた管理人さんは
「これは伝えなくてもいいかもしれないけど、彼女あなたの置いていった箱を持って帰るときに”彼がもし半年以内に現れなかったらそれは捨ててください”って預かったのよ。半年経ってもあなたは来なかったけどなんとなく残しておいたの…今になって渡せるとは思わなかったけど…今日あなたが来てくれて良かった。これ渡しておくわ。どうするかはあなたが決めたらいいわよ。あなたの人生なんだから。…ただし、もう既に恋人がいるならそれは捨てなさい。恋人にも彼女にも失礼よ。」
「いえ、恋人はいないので。」
「あらやだ。余計なお世話だったわね…思わず熱くなっちゃった。」
にこやかに手渡された紙には彼女の連絡先が書かれていた。

彼女の行動をその時はじめて知った。あぁ…だから彼女は俺を待っていてくれなかったのか…妙に納得してしまった。
一方的に彼女を責めていたけど、原因は自分にあったのか。彼女からしたら突然消えて連絡も取れない男より自分の側にいてくれるヤツの方がいいに決まってる…


何度か式場に足を運んだあるとき、彼女の変化に気付いた。
彼女が指輪をはめていない事に気付いて彼へ目を向けた。彼が指輪をしているのが目に留まった。なぜ、彼女だけしていないんだ?
目を凝らしよく見ると前に2人がしていた指輪とは違う様に見える…以前していたものよりオシャレで目立つデザインだった。しかも、他の女性スタッフとお揃いのようだ。
どういうことなんだよ。なんでそんな平気そうにニコニコしてるんだ…2人は別れたのか…?
それに彼女はいつ指輪を外したんだ?前回式場を訪れたときには指輪をはめていただろうか?……あの時は模擬挙式で彼女は手袋をはめていた…わからない。いつも彼女をなるべく意識しないように見ないようにしていたせいで肝心な所まで見逃していたとは。我ながら呆れる…彼女に直接問いただしたい気持ちになったが、それも出来ず、結局その日は何も確認できないまま帰宅した。

悶々とした気持ちを抱えながら、今度はコース料理を予約したからと式場へ行くことになり車中で綾乃に相談したら興味深々で彼女に会うなり目ざとく指輪をチェックしていた。つられて俺も確認したら彼女はまた指輪をはめていたのが、工藤さんは違う指輪だ。…どういうことなんだ?そんな俺の疑問を綾乃はあっさり美羽に聞いたという。
「紺野さんこの前指輪してなかったですよね?何か理由があるんですか?」
突然の疑問に困惑ぎみに彼女は
「えーと…はい。一度外したんですけど…ここだけの話にしてくださいね。元彼が式の招待客の中にいて再会したら言い寄られてしまって…彼とはあまりいい別れ方をしていないものですから少し困ってしまって…苦肉の策で指輪なんです。信じてあきらめてくれるといいんですけど…」
ちなみにこの会話は俺が席を立った隙に綾乃が話を聞いたらしい。彼女からしたら、元彼の婚約者には話しづらい内容だったはずだが、おおかた姉の口車に乗せられたのだろう。すべてはわからなかったので他の社員の人にさりげなく聞いて回ったらしい。
理由はよくわかった。姉の情報収集力に感謝しなくては…だがなぜ今も工藤さんとお揃いだった指輪をはめて続けているのか。未練があるようには見えないのに…だ。そして工藤さんはなぜ他の人とお揃いの指輪をはめているのだろう?…何か決定的な事が抜け落ちている気がしてならない…。

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