RE. sEcrEt lovEr
一先ず良かった(?)と胸をなでおろすあたしを今度は甲ちゃんがじっと見据える。

「それより、そろそろ話してくれるよね。 何か俺に言いたいことがあったんでしょ?」

言いたいこと…

それは夕べから不調だってこと?

それとも手術室での一件のこと?

「…甲ちゃん、心配しすぎだよ。“お父さん”みたい」

ふと、いつか読んだ本に書いてあった一節を思い出す。

“長女は我慢強い生き物”と。

あたしは一人っ子だけど、長女には変わりない。

母子家庭、病気持ちの要素もあって、普通の一人っ子より甘えることも上手くない。

だから「昨日から胸がまたドキドキし始めちゃって… 怖いの、甲ちゃん!(ここでハグ)」

まで出来たらママも一目置いてくれるかもしれないけれど、

生憎 あなたの娘は真逆なことを言ってしまいました…

女子力 いや、経験値のなさが裏目に出てしまいました…

そんな時に限って、タイムリミットの呼び出し。

「気のせいならいいんだけど。何かあったら 誰でもいいから言えよ?」

そう言いながらも、きっと彼はお見通しだと思う。

結局この日話せたことといえば、聞きたくなかった元カノさんの件、そしてキャサリンのどうでもいい件。

彼が仕事で出ていった後も一人 部屋で悶々と考えを巡らせていた。
< 19 / 45 >

この作品をシェア

pagetop