よるのむこうに


ああ。
ついに犯罪に手を染めたのか。
私はこのただでさえ痛む拳でまたあの馬鹿の頭をぶん殴らねばならないのか。


情けなさに目を何度も拭っていると、天馬は上機嫌で部屋に戻ってきた。


「お前、洗濯なんか俺がやるっていっただろ、帰るまで置いておけよ」


私は戻ってきた天馬を涙目でにらんだ。


「あんた、あの車どうしたのよ……」

「え?ああ。あれ借金して買った」


天馬は私の目を見つめて、疚(やま)しいことなど何もないといわんばかりにすらすらと答えた。

「ああ、借金ね。それなら……え、借金っ」

彼が他人様の車を盗んだわけではないと知って一瞬肩の力が抜けるが、よく考えたら借金だって決していいものではない。特に無職二人の二人暮らしにとっては。


「借金って」

「しょーがねーよ、俺貯金なんてしてなかったし」

「貯金するほど働いてないでしょ」

天馬は自称パチプロだがその実態はほぼ無職のモデルである。ほぼ無職。そんな人間に誰が金を貸すというのか。私だったら絶対に貸さない。銀行だって絶対貸さないだろう。だから天馬が何か違法な手段で金を調達したであろうことは考えずともわかる。


もしや相手の承諾もなく無理やり借金をしたとか。
人を脅してお金を出させたとか。
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