よるのむこうに

「えっと、うーんと……。じゃあ、さ。二人のためで今回のことはよしとするけどさ」


天馬はほっとしたように私の顔を離した。
つかみあげられていた首が痛い。天馬はいつになったらリウマチ患者はそっと扱いましょうというルールを覚えるのだろうか。


「おう、何?」

「これから大きな買い物とか大きな変化はお互い申告することにしようよ」

「めんどくっせ。急に欲しい物ができたらどうすればいいわけ。それもナシかよ」

「ナシ。あんたはいきなりこっちの予想を超えたことをするから怖い。今の私はあんたがやらかすことのフォローが必ずできるとは限らない」


私は無職で、今現在居食いの生活を送っている。
今まで忙しすぎてお金を使う暇がなかったので貯金は残っているが、それも治療費や生活費だけで贅沢をしなくてもどうなるかわからない。


「ふうん、わかった。じゃあとにかくそのルールを守れば別れるのはナシってことでいいのか」

「え?
えー……。うん、まあ。別れた方がいいって考えは変わらないけど、私と一緒にいて迷惑するのは天馬だから、お、お世話かけるかもしれないけど……お世話になる私の立場からは……何も言えない、よね……」


天馬は馬鹿だからわかってないのかもしれないけれど、この状況で別れを切り出したくなるのは普通、天馬のほうだと思う。
それなのに別れたい人と別れたくない人、なぜかお互いの立場が逆になっている。
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