よるのむこうに
そのとき、私の前にカップに入ったコーヒーがつき出された。
「飲む?」
顔を上げると、彰久君が微笑んでいた。
「彰久君……あ、あきひさくん……あ、会えてよかった……」
半裸の男性モデルがあたりまえのようにうろうろしているシュールな空間に放り出され、心細さを感じていた私は知った顔を見つけて思わず情けない声を出してしまった。
彰久君は華やかな美貌に笑みを浮かべた。
「何、その顔。泣きそうだね」
「だって、目のやり場に困るよ、こんなの」
彼は天馬のほうをみて苦笑した。
「ああ。そういうことね。別に見たってモデルはなんとも思わないよ」
そういえばこの人も常識人ぶってはいるが天馬と同じように現役のモデルなのだ。脱いだり人前で着替えたりといった行為に関しては全く私とは違った感覚をもっている。
「そんなに気になるなら俺を見ていればいいんじゃない?」
彰久くんは笑って私の顎に手をかけると、ゆっくりと私の顔を上げさせた。
その指先からほのかに花の香りが漂った。