よるのむこうに
「……天馬が世界中に体をさらすのはイヤ?」
彰久君がいたずらっぽい表情を浮かべる。私は首を横に振った。
「い、いやとか……そんなの、ないよ……仕事なんでしょ。それに……」
私は遠慮がちに天馬のほうに目をやった。
天馬は数人の男性モデルと一緒にポーズをとっている。
他の二人は天馬ほど背が高いわけではないけれど、運動をしたり食事制限をしたりしているのか、一般男性に比べてとにかく細い。
天馬は背が高いからこそ他のモデルと並んでも違和感がないけれど、彼らの中で飛びぬけて筋肉質だった。
そして元々きついその目でカメラを見つめるその表情にはいつもより野性味が漂っていた。おそらく目元の印象を強くするためにかなり長めにアイラインを引いているのだろう。
私は撮影の邪魔にならないように、ごく小さな声で彰久君にささやいた。
「天馬ってさ、私が思う以上に……プロだったんだなって、思う……見直した……」
私は天馬に見とれながらそう呟いた。
スーパーで買った二枚980円のタンクトップを着ていてさえ天馬はかっこいいのだ。
そりゃあちゃんとメイクをしてスタイリストさんの選んだ服を着ている姿は飛び切りカッコイイに決まっているのだが、なぜだか私は今までそのことについてちらとも想像してみたことがなかった。
私の知る天馬はどこまでもただのチンピラで、こんなにかっこいいなんて聞いていない。
天馬は何も悪くないのに、なぜだかずっと騙されていたような気がした。