よるのむこうに
トイレの個室の中で、小さくため息をついた。
天馬に言われるままこんなところまできてしまったけれど、私は早速後悔していた。
何故私は人の職場にいるのだろう。
天馬が心配してくれているのはありがたいことだが、まだ私は一人でトイレにいけるし、家事だって重いものを持つ以外のことはやっている。
ここにいるほかのスタッフから見れば私の地味を極めたかのような容姿はいかにも一般人そのものであり、ぱっと見て部外者だとわかる。
彼らから見れば私はミーハーな見学の人に他ならないわけだが、そんな私はあの場にいていいのだろうか。
トイレから戻ってもスタジオに入って待っている気になれない。
天馬もいつもの天馬ではなくてモデルの顔をしていてなんだか別人のようだ。
少し冷えてしまった膝をさすりながら立ちあがろうとしたその時、洗面台のほうから女性二人の声が聞こえた。
「あー……Bスタ時間かかりすぎじゃない?」
「しょうがないよ、いつものことだし。あ、それよりも見た?隣」
「うん、見た見た。あれって天馬だよね。あいつが仕事してるのって久しぶりじゃない?」
彼女らの言葉に私は思わず顔を赤らめた。天馬のことを言われると、自分の身内のことを言われたように恥ずかしくなってしまう。
彼女らは私の存在に気がつくこともなく話を続けた。
「ちょっと地味になったけどあいかわらずイケメンだったよねェ。あと、なんか地味な女と一緒だったね」