よるのむこうに
ショートヘアが笑い声を上げた。
「んなわけないじゃない、あの天馬だよ?相変わらず女の家を転々としてるって。
あんたのとこに来ないって事は金持ちのオバサンにでも囲われてんじゃない?あたしらみたいにかけ持ちでバイトして自活するってタイプじゃないよ」
「えー、オバサンの家に転がり込むくらいならうちに来ればいいのに」
「あんたどんだけ天馬のこと好きなのよ、カレシもちのくせに」
私は個室の中で口元に手を当てた。
私は金持ちではないが彼女らの言うとおりオバサンで、そして最近まで天馬を養っていた。
囲うだなんて。
その言葉が想起させる、生々しくもどこか絶対的な上下のある関係は実際の私達の関係とは程遠い。
私自身、天馬を囲っているつもりはなかった。
天馬は今でこそ家にいることが多いけれど、少し前まではどこにいるのか帰ってくるのか次はいつくるのか、そんなことは何も言わないでふらっと出ていく人間だった。食べさせてもらうかわりにその対価を差し出そうなんて発想は天馬にはない。
目の前に出されるものがあれば食べる。なければあるところに行く。それだけ。
だから実際のところ、私は少しも天馬を囲えていなかったし、そういうことを彼に望んでいるのでもなかった。
完全なる誤解だ。