よるのむこうに
傍から見れば私は若い男を囲う痛いオバサンに見えるのだろうか。いつも天馬と一緒にお一人様5個までの菓子パンを買うとき、レジのお姉さま方は私達をそんな目で見ていたのだろうか。いつも連れ立って食べに行く中華料理屋のおじさんも、病院の受付のお姉さんも、まさか。
ほぼ無職の年下男と半同棲なんてやっぱり私は天馬を囲っていたのだろうか。親にも職場にも今のところばれてはいないが、やっぱり私達の関係は傍から見るとかなり気まずいものなのだろうか。
私は一人で青ざめた。
彼女らはトイレに自分たち以外の第三者がいるかもしれないなどということは少しも気にならないのか、またピンクのピンヒールが話を続けた。
「カレシねえ。カレシはいるけど、でも天馬、狙っちゃおうかなぁ。天馬が戻ってくるなら今カレとは別れるつもり」
「あんたバッカじゃないの。天馬は女なんて財布のかわりくらいにしか思ってないよ。家賃払って養ってくれてる今の彼氏のほうがよっぽどいい男じゃん」
「私は財布でもべつにいいし。金のために恋愛してんじゃないし」
ショートヘアが呆れたように肩をすくめた。
「どんだけ天馬のこと好きなのよ、正直引くわ」
「好きっつうか……、あいつが誰にも興味ないのがムカつくんだよね。どうにかしてこっちを向かせたいってカンジ、かな」
「なにそれ、イマカレ超悲劇!あんた天馬に捨てられたこと、まだ恨んでんの?」
「ま、ね……。あのとき、こっちはちゃんと恋愛してるつもりだったから、あいつはそうじゃないってわかったときは結構ショックだったな。
私、男にそういう扱いされたことってなかったし」
「あー天馬はそういうとこあるよね。悪気ないのがまた腹たつっていうか」
「腹が立つからやり直したいんだよねー……ちゃんとあいつと恋愛したい」
彼女らはスレているのだか純粋なのかわからないやり取りをかわして、トイレを出て行った。
彼女たちのすらりとした後ろ姿がトイレを出て行く姿を見送って、私はやっと深い息を吐いた。