よるのむこうに
そのままスタジオに戻って撮影が終わるのを待つ気になれず、私は気持ちを切り替えるために建物の外に出た。
アスファルトの熱を含んだ暑い風が私の頬をなでた。館内の冷房で冷え切った体はその温かい風の中でほっと緊張を解いている。
リウマチ患者は体を冷やしてはいけないと病院でも言われたのに、自覚のないうちに随分体を冷やしていたらしい。私は無意識に両手で二の腕をこすっていた。
丁度昼時だったのでスーツを脇に抱えた会社員らしき一団が私の目の前を通り過ぎていった。
夏真っ盛りのこの季節に寒そうにしている私は彼らの目に奇異に映ったに違いない。彼らは一瞬私に目を向けたけれど、そのまま通り過ぎていく。
私は平日昼間にこんなところで何をするでもなく突っ立っている自分が突然恥ずかしくなり、ビルの影になった植え込みに腰掛けた。
トイレで話をしていた女の子たちの後ろ姿がまだ目の裏に焼きついている。
すらりと長い足とそれをさらに引き立たせるピンクのピンヒール。私だったら挑戦する勇気さえ持てないほど明るい色に染めた髪。
顔は見なかったが、話の内容から察するに彼女らはきっとモデルかそれに準ずる立場で、きっと顔も美しいのだろう。
天馬の髪も初めて会ったときはクリーム色に近いような金髪で、私はそんな彼の髪の色一つで彼をチンピラ認定した。
けれど、このオシャレな人々が行きかう街では黒いままでカットも重たい私の髪のほうが浮いていて、ある程度落ち着いた身なりが求められるはずのビジネスマンでさえ外国人風のパーマヘアと細身のスーツで身なりに気を配っている。
嫁入り前の女として、自分ではそれなりに身なりにも気をつけていたつもりだったけれど、私はこの街では随分と浮いている。いつもの商店街ではチンピラにしか見えなかった天馬のほうがこの街の平均に近い。